陸軍三長官会議で対満方針決定す 懸案を一挙に解決 1931/10/9

満洲事変の軍事行動も一段落を告げたので陸軍としては枢密院方面の要望もあり速やかに政府としての善後処置を決定すべしとの意見を抱持していたが八日閣議前に若槻首相は南陸相に対し陸軍側の態度を明示してもらいたいとの要求があったのでかねて陸軍省参謀本部において講究中の善後策を基調として陸軍の根本方針を決するため午後四時から陸相官邸に三長官会議を開き南陸相、金谷参謀総長、武藤教育総監、杉山次官、二宮参謀次長、小磯軍務局長出席、まず南陸相から「政府の希望もありかつ満洲事変の軍事行動も一段楽を告げたからこの際陸軍側の確固たる意見を定め帝国の採るべき態度につき御協議を願いたい」と述べ、陸相は主として外務省及び政府側の意向を伝達し、金谷参謀総長は軍事上より見たる参謀本部側の意思を陳述し武藤総監もまた腹蔵なき意見の開陳をなした結果、大体次の諸点において一致した。

一、解決条件
満洲事変は支那側の不法行為に発足したる不祥事件なるをもってこの責任の一切は支那側において負担すべきものである。従って支那側をして十分その非道を改めさせることを第一の条件とする。
一、満蒙諸懸案
満蒙諸懸案中最も重要なる鉄道、商租権問題は是非共この機会に解決させるが新規の権益の要求その他火事泥式の要求は一切しない。また満蒙の開放、機会均等の主義の貫徹には今後共機会ある毎に努力する。
一、交渉相手
満蒙の特殊地位に鑑み凡て地方的問題として支那中央政府との交渉案件とせぬ。しかし現在満蒙においては交渉相手とすべき政権がないからこれが出現するまで依然現在の姿勢を持続して待つより外ない。
一、撤兵時期
満蒙における鉄道及び邦人の生命財産に危害を及ぼすことなきを保障し得る確固たる政権の樹立をまって直ちに撤兵する。それまでは現在通り付属地以外の若十地点の駐兵は継続する。
一、排日侮日の取締
九日付南京政府に提出したる抗議は第一次的のものでもしこの抗議に対し南京政府が依然現勢を維持するにおいては第二次抗議をなしその時は実力を以ってこれを断行する意思を表明し、又学生に対し排日侮日の教育は即時停止せしむ。
一、国際聯盟対策
国際聯盟が世界平和のため貢献せんとする努力に対しては敬意を払い出来得るだけ事情の真相を説明して諒解を求めるが単なる日支両国間のしかも一地方問題にまでおせっかいをする態度を継続するにおいては反省を促すの要があろう。
一、将来の保障
満蒙権益の実行を約さしめてもなお将来今回の如き事件の発生を保し難き支那の特殊事情に鑑みもし将来不祥事を起こすが如きことある場合には有効にして適切なる処置をとるの自由を保留し置くこと。

大体以上を決定し六時散会したのでこれを彼此案配するため杉山次官、二宮参謀次長、小磯軍務局長、梅津総務部長、建川第一部長、永田軍事課長は午後七時より参謀本部において三長官決定案に基き具体案を作成し同九時散会。

※東京朝日新聞昭和六年十月九日朝刊

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