三長官会議で方針協議
二十日午後三時五十分から陸相官邸に開かれた三長官会議には南陸相、金谷参謀総長、武藤教育総監の外、杉山次官、二宮参謀次長、荒木本部長の三次長と小磯軍務局長出席満洲における情勢並びに向後の方針につき協議した結果左の如く意見の一致を見たが、その後刻々到達する諸情報を総合すれば吉林軍の態度が判明せぬため長春方面の不安なお去らず、万一の危険さえ憂慮されているので朝鮮師団の移動も全くその状況の推移を待つことになった。なお間島地方の実態は日を逐うて悪化し在留邦人の生命財産も危険にひんしつつあるので頻りに出兵を要求して来ているが同方面の情勢が到底楽観を許さぬ状態になれば勢いここにも朝鮮軍の一部を出動せしむる必要が起こるかも計られぬ。兎も角長春並びに間島方面の一般的状況は次第に急迫を告げているので二十一日午前中に臨時閣議の開催を要求し時局の現状について諒解を求め、臨機な処置に遺漏なきを期することになり同五時過ぎ散会した。
一、奉天長春方面の状況は大体一段楽をつげこれ以上大規模な戦闘行為が惹起されそうなは思えない然し関東軍の兵力を以て鉄道守備の外占領地の治安維持に任ずるとは極めて至難と思われるが未だ本庄司令官から増兵を電請して来ない以上当分このままに静観する、但し支那側の方でも軍隊を集結しつつある模様なのでこれが逆襲的態度に出てくることとなれば当然増兵しなければならぬ。
一、出兵するとなれば内地から出すよりも朝鮮軍を動かす方が適当であり現に混成一旅団は新義州において待機の姿勢にあるが当分この状態を継続させる。ただ朝鮮軍に国境を越えさせるとなれば当然閣議の承認を経なければならなぬが事態急迫して指示を受ける暇なき場合は軍司令官の独断を以て出兵もなし得るのであるから関東軍と朝鮮軍とは今後密なる連携を保ち状況の変化に応じて機宜の処置は両司令官に一任すること。
一、朝鮮から出兵した場合直ちに朝鮮軍補充の必要ありや否やは出兵の状況によることであるが混成一旅団位の出兵であれば補充の必要はない。間島方面も不穏の状況あるもその程度がいまだ出兵するだけのものではない模様だからこれも状況の変化に応じて適宜朝鮮軍の方で処置せしむる。
一、満蒙問題を今回の事変と関連せしめて解決すべきや否やは一に政府の方針によるが陸軍としては本事件の解決と併行して満蒙諸懸案を解決せしむることが適当であるからこの旨を陸相より政府に進言させる。
一、今回の事変はどこまでも地方問題として取扱い日支間の問題とせずに解決せねばならぬ。
一、政府の方針たる事態を拡大せしめないようにすることは陸軍としても最も望ましいところであるが事態の拡大と軍隊の行動範囲の拡張とは必ずしも一致すべきものでない、故にこの点は十分政府に説明してその諒解を求めること。
※東京朝日新聞昭和六年九月二十一日朝刊

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