米国オブザーバーの国際聯盟理事会参加問題に関する芳澤大使の請訓は十五日午後外務省に到達したが、外務省では直ちに芳澤大使には米国オブザーバー参加を防止するに努力せよとの回訓を発すると同時に出淵在米大使にあてて日本政府は本問題につき特に米国オブザーバーが理事会に参加する事はこれを希望せざる旨を米国政府に伝達する様訓令を発した模様である。右の如く態度を示した理由について外務当局はこれを明示しないが、ジュネーブにおける政治的情勢では米国の参加を防止する事は困難な模様であるが、聯盟規約の解釈問題等法理問題としては米国参加については多大の疑問ある事即ちオブザーバーとして米国は聯盟に対して発言権を得る事となるが右の権利に対応して米国は聯盟に如何なる義務を負うべきものなるか、すこぶる不明瞭である事は法理問題としてにわかに断定し得ざる研究事項たるのみならず、一方米国の伝統的対聯盟政策からみて米国輿論が米国代表の理事会列席に対し果たして如何なる態度を示すかは問題であるので、この際我国としてジュネーブ及び米国の政治的情勢にして真に万やむを得ざるものあらば強いてこれを拒否する程の事項でもないが目下の情勢においては米国参加防止に努力するのが妥当であるとの結論に到達したものと観測される。
回訓ジュネーブに着く
【ジュネーブ十五日発聯合】日本代表部は十五日午後本国政府よりの米国オブザーバーの理事会出席案に関する回訓を接受した。右によれば日本政府はアメリカのオブザーバー招請の可能性に関し、法理上の見地から多少疑問を存するものと見て居り、日本代表部は本日午後五時よりの理事会秘密会議において右の法理問題の上よりアメリカのオブザーバー参加案を審議することを求めるものと解され、しかる後日本側は更に何分の対策に出づるものと見られる。
※東京朝日新聞昭和六年十月十六日朝刊

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