蒋氏、和平解決を求め若槻首相に密使特派 昭和六年九月三十日

支那側の態度著しく軟化 顔の潰れぬ程度に譲歩か

【上海二十九日発電通】去る二十二日蒋介石氏の命を帯び渡日せる齊世英氏は蒋が若槻首相に宛てたる密書を携え行きたることは判明した。聯盟に見放されたる国民政府は方策が立たぬ如く第二の密使を日本に派遣すべしとの議が相当親近の要人間に有力となりつつありさきに聯盟の態度不明の際共同調査は宋子文氏の私案なりとして刎ねつけた態度を翻し更めて共同調査を組織しこの辺より和平解決の緒口を辿らんとする気配も見え大体として国民政府の対日意見著しく軟化せるは事実で国民政府の存立を危うくせざる程度の譲歩をなし日本に泣きを入れんとする態度が漸く顕著となって来た。

齊氏外相と会見し、我が真意を確かむ

支那国民党の幹部である齊世英氏は二十九日午後三時外務省に幣原外相を訪問し満洲事変に対する幣原外相の意向を聴取し種々意見を交換したが氏は今回の満州事件の真相並びに日本朝野の意向を確かめるため国民党より特に派遣され二十二日南京発、二十六日来京し犬養頭山、床次等の諸氏ともすでに会見、意見の交換を行ったもので蒋介石氏にも外見した点より見て、氏は南京帰還後何れ蒋介石氏にも確かめ得たるにほの朝野の意向を伝えるものと信じられる。しかして二十九日幣原外相との会見においては特に日本政府が満洲に対して如何なる意図を有するかを質したものの幣原外相はこれに対し日本政府が何等満洲に領土的野心を有せざる事を明らかにすると共に今日日支直接交渉によって満洲の事態を改善し日支共存共栄の実をあげんとする氏の対支政策を詳細説明したが齊氏は幣原外相の意見を相当理解し日支直接交渉によって日支関係を再び元の軌道に復したい希望をのべ満足して会見を終わったものの如く更に谷アジア局長とも会見意見の交換を遂げ同四時半辞去した。因に氏は三十日東京発南京へ帰還の筈である。

※讀賣新聞昭和六年九月三十日

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