悩める女性へ 昭和六年九月二十六日

女の痩腕で家計の負担 いっそ女給になったら

問:私は二十三になる某会社の事務員でございます。家族は七十五歳の祖母、五十五歳の母、十二歳の妹、それに私との四人暮らしです。昨年六月病気の父がなくなってからは、僅かの貯金と私の収入(月給三十三円です)とで辛うじて生活しておりますが、僅かばかりの貯金がそう長く続く筈もありません。不便なところに居りますので交通費に五円はどうしてもかかります。母が内職でも出来るとよいのですがカラダが弱くて何も出来ません。

縁談があっても家族が多いものですからこうした家に飛び込んで来る養子は見当たりません。嫁になって欲しいという方はありますが。毎月々々減ってゆく貯金通帳を見て私はじっとして居られません。一家を養う重い責任を考え、いっそ女給になって稼ごうかと思って居りますが如何でしょうか?(すみれ)

まずお祖母さんを預けてあなたは間借をしなさいー正田淑子ー

答:お手紙を拝見して誠にお気の毒に存じます。お手紙では御親類の有無がよく分かりませんが、それを考えに入れずにお答えすることにしますと先ず祖母さんは府下高井戸町上高井戸にある(養老園)のような所へお入れになる方が祖母さんの為には幸福かと思います。多少さびしくはあるでしょうが物質上の心配はなくなりますから、お宅にいらっしゃるよりもお互いに幸福な生活が出来るかと思います。

そして家族三人でしたら一軒家を借りる必要はありませんから、お勤め先の近くに六畳か八畳の部屋を借りて自炊なされば、交通費と祖母さをの生活費とが省け、かなりの余裕が出来るでしょう。そして妹さんが小学校を卒業するまで後辛抱なされば妹さんもまた就職の道が開けましょうから、決して社会一般のいやしめる女給さんになる事はなさらない方がよいと思います。

勿論女給さんが悉く不良というワケはありませんが、仕事の性質上収入を多くしようとするにはどうしても心にないことまでするようになり、為に社会からいやしめられて居ります。それ故失望なさらず判断をあやまらず、有望な将来のあることを忘れないで奮闘なさることを切望します。

※讀賣新聞昭和六年九月二十六日

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