女性相談 約束を反故にされて 1931/10/10

問:私は十八歳の女ですが昨年の夏フトしたことから某青年と恋仲になり、日のたつに従って益々深くなり、事実上の夫婦になってしまいました。私の父母はそれを察知し、その青年が遊びにくるとわざわざ席を外して二人が仲良く話す機会を作ってくれたりしました。
 ところが、その青年の父母はそんなことを知らず、外から嫁を迎えるようにきめ、結婚式の日取りまで定めてしまいました。最初彼は困った困ったと言っていました。そして、父母に私のことを告白したのですが、なかなか聞きいれてはくれないでこの親の目の黒いうちは決して承知せぬというはさ、親類もこぞって反対するので、いつの間にか彼の気も変わってしまいました。
 私の父母は大変立腹して彼に向かい「外から嫁をもらうならもらってみよ。こちらにも相当な考えがある」という風に怒りつけました。私もくどくどと彼の無情さを責めました所、彼はいずれかへ家出してしまって、そして私にあきらめてくれるよう手紙を寄越しました。その後五十日あまりにもなりますが何の便りも無く私は悶えています。二人で苦労を共にしようと一度誓ったものですから私は彼を待っている次第です。もし今後も何の便りも無い場合に裁判所へ持ち出しても私が負けるでしょうか?それとも、あっさりあきらめて他に嫁入りする方がよいでしょうか?

あきらめるのが勝利

答:男の無責任は言語道断で、私もあなたの御両親と共にどこまでも追求してやりたい気持ちですが、しかし、本人の意思が弱く、周囲の事情に心がふらついてあなたから離れて行こうとするような人間ですから、裁判沙汰にしてよしあなたが勝った所が平和に幸福な家庭が出来るようには考えられません。
 それでも、どうしてもあなたがその青年を忘れることが出来ないのなら、その青年のまぼろしを抱いて外へ嫁入りするということは悪いことですが、もし見損なった、あんな意志薄弱な男とは思わなかった、という風にあっさり諦められるなら諦めて、そして新たな道を切り開いて行く方が結局あなたの幸福であり勝利であるように考えられます。

※東京朝日新聞昭和六年十月十日朝刊

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