不安に包まれた支那公使館

情報を南京に転電

麻布飯倉の中華民国公使館は十九日早朝から、館員が続々として出勤した外から見ると平静とかわりないが刻々発行される号外をボーイが買い込むのを仕事にしているところを見ると、内部の緊張ぶりが想像される。館内に入ってみると果たしてその通りで号外を持った書記官達が廊下を右往左往する。控室では支那の新聞記者が号外を中心に議論している。館員の一人に尋ねると公使館の仕事は今のところ東京に伝わる情報を南京に転電することであるそうだ。「日本奉天を占領、城内に支那人無し」との報道がくると、代理公使江洪杰氏自ら本紙の号外を手にし、自動車を駆って外務省に真偽の程を確かめに行く・・・・・・外務省から還った江代理公使は語るに、

今度の事件は局部的のもので日支交戦などと騒ぐ性質のものではない。両国の軍人が喧嘩をしたのに過ぎない。両方とも軍人のこととて武器を持っているからその喧嘩がたまたま戦争の形をとったまでである。日支親善の根本を揺るがす程度のものでないと確信する。

尚お鳥居坂署では管内の支那公使館に万一のことあってはと十九日朝来警戒の警官を増加し厳重警戒に努めている。

※東京朝日新聞昭和六年九月二十日朝刊

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