英の言論界は日本の立場を諒解す 評論や雑誌に現れた論調
【ロンドン特派員二十六日発】二十六日発行の週刊評論雑誌の満洲事件論表は左の通りである。
ウィーク・エンド・レビューいわく「国際聯盟としては日支紛争の調停に立つとは理論的にのみ可能であった。日本は満洲においてイギリスのエヂプトにおけると似たような地位を主張するものであり、聯盟理事会の斡旋を受諾することは日本としてはかかる特殊地位を放棄することを承認するように思うだろう。日本が満洲を永久に物にしようとすることはあり得ないことと思えるが、然し日本軍の奉天占據とポーランドがヴイルナ占領又はリスアニアのメーメル占領との間に似通った点のあることは見逃せぬ。然し支那としては経済的ボイコットという武器を持っており日本が余り長く止まって居るとこの武器を持ち出すだろう」
スペクテーターいわく「支那現在の無力さと不秩序とは誘惑の種であるばかりでなくその支配力の欠乏及び法律秩序の行われぬことは暴力をちょう発するものである。しかして満洲におけるかかる戦争行為は非常に危険なものである」となし更に同誌は他の論説で「聯盟理事会がこの件を処理すること刻下の急務である。過失は双方にある。支那の政治家はえてライオンの尾をねじるような真似をして外国人を困らせ国外の評判を良くしたがる。然もかかるやり口は東支鉄道問題でロシアの怒りを買ったのに懲りもせず、日本に対してもこれを行ったのは日本人の忍耐力が際限がないとでも思ったのかもしれない。然し一方日本軍としては満洲のかかる異常なる状態につけ込んだきらいがないでもない。問題は然し事の正邪にあるのではなく聯盟参加の両国によって何等の通告も警告もなしに互に武力が行使された点にあり、かかる行為によって聯盟規約のみならずケロッグ条約が蹂躙されたという点にあるのだ。これ現在の財政経済問題の困難な最中にあってしかもヨーロッパ並びにその他の聯盟参加国が満洲事件を黙視すべからざる所以である」と論じて居る。
サタデー・レビューいわく「日本は支那の満鉄競争線敷設、ロシアの北満進出、支那の反日宣伝に業を煮やしたもので日本としては支那と友好関係を保ちたいのだが、その当然の権威をかなぐり棄てるには余りに重大である。況や支那の現状は人の知る如くなるにおいてをや、満洲は日本に取っては全てである。今や日本はその目的を達成せる軍事行動の結果を遺憾なく利用するであろう」
セシル子爵の急変 ガーヂアン紙の批評
【ロンドン特派員二十六日発】二十六日のイギリス新聞中満洲事変について社説を掲げたのはタイムズ紙のみであるが国際聯盟総会に出張中の各新聞外交記者は二十五日夜の理事会を報道せる記事の中にそれぞれ意見を述べている。
デーリー・メール紙は「大きなお世話だとの回答を受け取った」と報じているが肝腎の日本の回答は十行足らずしか載せていない。
ニュース・クロニクル紙の記者は支那の肩を持って支那の回答は満点、日本の回答は疑問を抱かしめた箇所があるとなし、又二十五日夜セシル子爵の調停ぶりについて日本の肩を持ちすぎた意気地ないやり方だとの非難が起こったことを報じているが、しかし今後の反響はかかる判断の誤りであることを示すかもしれない、理事会が日本と一勝負することは見物の劇的本能を満足させるだろうが真の目的を達成するためにはかかる手段以外にもっと政治家的な方法があるべきだといっている。
マンチェスター・ガーヂアン紙の記者は、
br米国が調査委員会派遣など積極的手段を取ることを拒絶したために理事会の立場はデリケートなものとなり第一回の会合でセシル子爵及び理事会がとった強硬な方針を続けるか否かが疑問になって来た。その結果当のセシル子爵自身が日本の態度についてあくまでも穏健妥当な演説をすることになったもので、あの演説は大国間に大きな危機が発生した場合には国際聯盟はその権威を失うものであることを自認したものだとなし、セシル子爵の演説は第一回会合の時とは打って変わった妥協的な調子を聞く者をしてびっくりさせた。ある者はセシル子爵は支那を裏切ったとまで公言していたと報じている。
※東京朝日新聞昭和六年九月二十七日朝刊

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