家族の大きさと子供の智能
我が国ではまだ手をつけて居りませんが欧米殊に米国では「家族の大きさと其の智能に関する調査が盛んに行われるようになりました。言い換えると子供の多い家族と少ない家族とでは、その子供の智能に何か相違はありはしないかという点に重きを置いた調査です。その結果はドイツ並びに英国で行った調査と同様、子沢山の家庭に育った子供は少ない家庭に育った子供より頭が悪いということになって居ります。これと共に親の階級を調査した結果によりますと上流、中流の家庭は子供が少なく、細民に子供が多いということになって居ります。それ故に、こういうことがいえるのです。即ち次の時代には頭の悪い人間が、激増して社会としても国家としても悲しむべき状態にならぬとも限らないというのです。以上のような趣旨から帝大心理学研究室の山下学士は我が国の家族について調査される計画をたてて居られますが、今日はその前提として、欧米の調査の結果わお話し願いました。最初の調査は一九二五年アメリカ、スタンフォード大学のタアマン教授が千人の児童のうち九十二人の天才児童を選んで、その兄弟の数を調べたものですが、その結果は兄弟の少ない子が智能的に最も優秀で、兄弟が多くなるに従って同じ天才児の中でも多少劣るという事実を示して居ります。この調査で注意すべきはその後も産む可能性のある母親(即ち月経閉止期前の母親)の児童を材料にとらなかったことです。
二人子が最も優秀
次は同じ一九二五年アメリカ、ニューイングランドに於いてチャプマンウイギンスが調査したものでこの時は特に天才児童をとらず一般家庭の児童について調査したのです。その結果によると、
一家族の子供の数:平均智能指数
一人の場合:一一七
二人の場合:一一八
三人の場合:一一四
四人の場合:一〇八
五人の場合:一〇六
六人の場合:一〇六
七人の場合:一〇五
八人の場合:一〇三
九人以上の場合:九八
となって、兄弟二人の場合が最も智能の優れている児童の出来ることを示して居ります。この調査は五歳以上の児童を六百三十二家族から選んだもので、注意すべきは両親の教育関係をも併せて調査したことです。その結果によると
優秀児と親の教育
両親共中等教育を受けたものが出産率最も低く三.三〇
次が母親だけ中等教育を受けたもので三.四〇
第三は父親だけが中等教育を受けたもので四.二〇
最後に両親共中等教育を受けぬもので四.九〇
とあって、教育のあるものほど、子供の数が少ないという事実を物語って居ります。
産児制限は母の意思
殊に面白いのは母だけが中等教育を受けた家庭の方が父だけの場合より子供が少ないという事実です。これは産児制限が実際に於いて母親の意思によって行われるということを語るものではないでしょうか。第三の調査は一九二七年レンツがアメリカで行ったもので、ニューヨーク、ニュージヤアシイ、ミゾリ、イリノイス等の各地で行って居ります。この調査は母親の年齢を考慮に入れなかった点に不備がありますが四千三百三十九人の児童(六歳ー二十歳)に就いて調べた結果
大抵低能五人以上
平均知能指数:一家族の子供の数
一五〇以上:二.二
一四〇〜一四九:二.五
一三〇〜一三九:三.〇
一二〇〜一二九:三.一
一一〇〜一一九:三.五
一〇〇〜一〇九:三.五
九〇〜〜九九:四.二
八〇〜〜八九:四.九
七〇〜〜七九:五.三
六〇〜〜六九:五.七
五〇〜〜五九:五.七
四〇〜〜四九:五.五
となり七〇以下の児童を低能として居りますから五人以上の子供を持つ家庭の児童は大部分が低能となって居ります。最近の調査で面白いのは、一九三一年コロンビア大学のマラア教授が行ったもので高級住宅地(E)と細民街(L)と地方都市ウオルデン(W)とに分けた一家族あたり平均児童数です。場所:子供数
(E):二.八
(W):三.〇八
(L):四.二六
即ち高級住宅地が一番少なく、次が地方都市、一番子供が多いのが細民街となって居ります。
讀賣新聞昭和六年九月二十四日朝刊

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