悩める女性 若い恋人の愛にひかれ思い切れぬ三十七の女 1931/10/13

問:私は親も兄弟もない三十七になる女です。家を相続すべき重大な責任を持つ私は三年前よりK(二十八歳)を恋するようになりました。ところが昨年あたりからKの考えがガラリと変わり私に金銭を要求するようになりました。悪友の影響と思いますが、今では私を捨てて寄りつきません。しかし私はKを忘れることが出来ず、それどころか益々愛は深くなるばかりです。

Kもまた全然見向きもしないというのではありません。時々金をねだりに来ては後々の親類になるよう兄の子を貰ってくれというのです。親類の手前もあり、それは出来ないと言うとKは怒ります。Kは一体どういうつもりでいるのでしょうか。また私はどういう態度をとったら良いのでしょうか(府下の女)

相手に不純な点が見られます 思い切って新しい道に進むこと 河崎ナツ

答:三十七歳まで適当な相手の見つからなかったことを先ず残念に思います。勿論先日も申しましたよう様に弱くて言い出せぬ人も多くそのために婚期を逃してしまう場合も考えられますが何してもKとの恋愛は余り喜ばしくないような気がします。

あなたの方は非常に熱心なようですがあなたが熱心になればなるほど、相手は冷やかになるのではないでしょうか。これはあなたの場合だけでなしに全ての恋愛についていえることかもしれませんが。

あなたがKに好意を持つことは少しも悪いとは思いませんが、相手のあなたに対する態度には多分に利欲が動機となっているように見受けられます。

殊に「兄の子を貰え」という裏には、あなたの財産を自由にしたい野心がないともいえますまいし、それを交換条件にして、あなたとの恋愛生活を続けるというのでは誠に心細いことではないでしょうか。

あなたのイヤな子まで我慢して貰う必要もなく、思い切り難いことでしょうがKとの関係をキッパリ思い切って更に適当な御養子をお探しになる一番良いと思います。世の中では自分の望みが悉く達せられるというワケにはゆきませんから、或る場合には思い切る覚悟が必要です。

※讀賣新聞昭和六年十月十三日朝刊

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