大蔵省専売局で減収の穴埋めに婦人煙草を新製して売だす計画が発表されるやこれに対して婦人矯風会の守屋、田中両女史は早速専売局に平野長官を訪れて「政府が、有毒危険なものとして知られている煙草を売だすことは、一般婦女子に堕落を奨励するものである、堕落を奨励してまで財源を補てんしようとは甚だもってけしからんことである」との意を述べて強硬に反対し、またキリスト教団体や、その他の個人からも赤字の犠牲に婦女子に喫煙させることは道徳上許すべからざることだ等々々、こうした意味の反対抗議が続々として専売局に舞い込む、そこで長官の意見はどうかと煙に巻かれない用心をして、専売局に推参して見る。
あえて奨励する訳ではない 時代の要求に応ずるのだ 専売局側の弁明
専売局では従来婦人向きの煙草として「やよひ」がありましたがこれの製造は昨年の四月に中止したので勢い今まで「やよひ」を吸っていた婦人の煙草がなくなった。そこでこれに代る煙草が必要となったことが一つ、他方この二三年来英米をはじめ諸外国婦人の間には喫煙が益々流行し、列車等にも喫煙車が連結される様になったが、これは我国でも殊に若い婦人の間に著しい傾向であって、しかも明日の婦女子の社交範囲が益々広くいよいよ必要になってくることはだれにでも容易に見通されるだけに婦人の喫煙ということはやがて当然のこととなり、従って、婦人煙草の需要層が拡大するということが伺われましょう。
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そこで新しく出来る婦人煙草ですが、従来あった「やよひ」は「国華」程度の強さでニコチンの含有量は「朝日」や「敷島」よりも多く、品質はどちらかといえば男子向きのものだった。また昨年から売だされているオランダ製の「ミス・ブランシュ」は黄白紅青等派手な美しい色紙巻きの婦人煙草ですが、二十本いり一円二十銭、一本六銭という高価なもので、だれでも手が出せるという代物ではない。そこで、「やよひ」や「ミス・ブランシュ」のようではなく、品質も値段も、特に体裁や形色を、婦人煙草らしいものにしてみたいと思います。
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目下製造部の方で、味や意匠なんかの研究に着手していますから、大臣の決裁があればおそくも明春三月頃までには華々しく市場で皆様にお目にかかることになるでしょう。最後にも一度繰返す様ですが、婦人煙草の製造は現在すでに煙草を吸っている婦人に、本当の婦人煙草を提供するためにこしらえるのが眼目で、「煙草を吸うと太った方はやせられる」とか「疲労回復」といった宣伝語を掲げて婦人のきつ煙を奨励するなんていうのは全然ウソです。
※東京朝日新聞昭和六年九月十九日朝刊

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