【奉天特派員四日発】関東軍司令部は四日午前十時満洲事変に関し日本軍の取るべき今後の重要態度を表明せる全文次の如き声明書を公表した。
北大営駐屯歩兵第七旅は旅長王以哲の率いる張学良直系軍中の最精鋭部隊としてその威名東北四省に振いたり。しかるに一度暴挙を敢てし我軍の膺懲するところとなるや、敗退の各兵は逐次所在に集結し聲威の回復に努むるとともに、到る所集闘して暴戻をほしいままにし婦女を辱かしめ、金品を略奪し、就中我が同胞たる朝鮮人を虐殺すりもの続出し、殊に大甸子の如きはその兇手に倒れたるもの百余名を下らず、我軍討伐に出動すれば忽ちに白旗を掲げ軍使を差遣して降服を装うら、精鋭無比をもって任ずる第七旅にしてなおかつ鬼畜も敢えてせざる蛮行を行う。況んや他の素質劣悪なる軍隊が敗残の後賊徒と化し秩序を破壊せる如きは⚫︎⚫︎⚫︎も怪しむに足らず、これを文明各国の軍隊あるいは独立国家の資格を備えたるものと称し得べけんや、借問す彼等の徒⚫︎を部下とせる旧東三省政府に対し同等の地位に立脚して国際正義を論じ得べきや、外交交渉を談じ得べきや、今や政権樹立之運動各所に発生し庶民ひとしく皇軍の威力を謳歌するも旧頭首を推戴せんとするの風微塵もなし。けだし積年軍閥私欲の横暴に憤慨せる結果に外ならず、軍は政治外交に超然として専ら治安維持に任じ兵を養い静観を待しつつあり、もとより軍により治安を維持せられある奉天省城内に政権を樹立し、あるいはひそかにここに策謀するが如きは断じてこれを容認せず。しかれども満蒙在住三千万民衆之ため共存共栄の楽土を速やかに実現せんことは衷心熱望するところにして道義の上より見るときは速やかにこれが統一を促進するはけだし我が皇国が善隣の好誼を発すべき緊急の救済策なりと信ず。これ東洋永遠の平和を確立すべき方策にして、中外に施して敢えてもとらず皇道たる正義を愛する世界万国が三千万民衆の幸福を増進するためこれを支持し協力するにやぶさかならざるや明らかなるところなるべし。
民衆の保安を期す 支那文で一般に布告
【奉天特派員四日発】関東軍司令部は本庄軍司令官の名を以て四日次の如く支那文の布告を発した。
日支両国之共存共栄と東北民衆の福利増進とを懸念する日本軍司令官はあまねく東北一般人士に告ぐ。今回日支両軍の衝突たるや日本軍は傍若無道なる東北軍憲の挑戦に応じ全く自衛の手段に出たるものにして事変発生之禍根は一に国際正義を弁えざる東北軍憲者流の専横に端を発す。彼等は民衆を抑圧し苛政を布き誅求これ努めしかも日本の正当なる権益を侵害蹂躙せんとす。その欲する所単に私利私欲と権勢の拡張とに過ぎずこれ実に東北三千万民生を愚にして日支国交を害するものにして天意に背反するものなり、事ここに至る。日本軍の敵とする所は暴戻なる東北軍憲一味の者にあり。しかしてその期する所は断然彼等を排撃して正義人道を擁護し民衆を救いその生を厚くし福利を増進するに存す。民衆は宜しく日本軍の保護に信頼し農工商各々その分に安じ業務に勉励し以て永遠に東北繁栄の基礎を確立すべく努力せん事を望む。
⚫︎は判読不明文字
※東京朝日新聞昭和六年十月五日朝刊

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