女性相談 同棲せずとも妻として  昭和六年九月三十日

問:私は結婚後病を得て一年あまり実家に身を寄せて居る者で御座います。そして私が病気になって半年後に夫は胸をむしばまれて寝てしまいました。
 私は急性の病で烈しい苦痛と闘いぬいた後に片足の曲節が不自由になってしまいました。私が苦しんでいる間の婚家の冷淡さに実家では反感を持ってしまい、今では両家反目し合っている様な有様です。ですから重病な夫を看護することも出来ず又行くのを許された所で私は半病人同様。
 私の存在を無視したような婚家の仕打ちに私は実家の親兄弟にも済まず、妻としての道も尽されず、このジレンマのうちに悶々と暮らしています。足が不自由でも帰って夫に仕えるのが本当と思いますけれどまだまだ養生しなければいけない体ですし姑が大変と思って、実家で一心になって養生しております。
 離婚話が出ますが、私は同棲は無くとも病の夫と別れるのは死よりつらいと思います。二度と結婚の意志のない私はいつまでも今の夫の妻でありたいのです。そして薄幸な二人で清く慰め合って自分等の体をなおして行きたいと思うのですが私の考えは妻の道に外れているでしょうか?

会って気持ちを伝えなさい

答:妻の道に外れている所ではなく、それが本当の行き方です。たとえ同棲はしていなくても、かげながらあなたが一生懸命御良人の回復を祈っておいでになることを御良人が承知しておいでになって、又、くる春の日のためにお互いに大いに自重しましょうということになって居れば、どんなに力強く、養生するに張合があるかしれません。
 重い病と闘う、つまり、病の力を征服するために極力養生しようとするには大きな精神の力を必要とします。そして、その精神の力は周囲の人たちの、既婚者であるならば自分の配偶者の自分に対する誠意を信じる所から主に沸いて出るものでありますから、あなたはどこまでも忠実な妻であるということを御良人に披瀝して置きにならなければなりません。婚家と実家の反目のために、さらにだにさびしい御良人の心を一層さびしくするような態度に出るならば御良人の病は重くなるとも軽くはならないでしょう。それこそ妻としての道に外れることになりましょう。何とかして一度御良人にお逢いになってあなたの気持ちをハッキリ諒解してもらって置きなさいませ。(山田わか)

※東京朝日新聞昭和六年九月三十日

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