覇権を狙う張景恵氏
ハルビン特派員二十九日発】ハルビン支那側では特別区治安維持会を組織し、特別区の治安維持につき具体的弁法を講じたが、同時に行政長官張景恵氏は二十四日ハルビン帰任以来の計画に基き三十名の特別委員を選任し東北政権より分離、完全なる東省特別区の独立的自治制を布いた。なお張氏はこれのみに止まらず張学良氏に取って代わらんとしきりに暗中飛躍をなしつつありと⚫︎ら伝えられている。即ち万福林、湯玉麟等同僚以下の者が権勢を振るいつつあるに比し同氏は一行政長官に過ぎず不遇をかこっていた折柄今回の事件で張学良氏は到底その地位を維持するを得ざるべき形勢に際しあわよくば張学良氏の後がまに座るべく目下しきりに計画を進めつつあり張作相氏ともすでに諒解済みであるといわれている。【写真は張景恵氏】

新政権運動中の雄
張景恵氏は張作相氏と共に故張作霖氏と義兄弟の間柄にあって奉天派中において旧派の勢力を代表する、故張作霖氏をさしはさんで張景恵張作相の両氏はがん行累進し来たものであるが張作霖氏の死後旧派武将がいずれも没落の悲運に会するに至ったうちにあって張景恵氏は張作相氏との相互扶助の関係において辛うじて現位置を保っていたものである。しかし今回の事変にあって学良氏の一派、張作相氏等がいずれも国内にあってその故城を失ったにも拘らず張景恵氏は一人その勢力をまとめて保持することが出来たのは強みであった。今回新政権運動の中では最有力のもので各政府間に連係が出来るとすれば氏はさしずめその首位につく可能性があるものではあるまいか。
⚫︎は判読不明文字
※東京朝日新聞昭和六年九月三十日

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