問:私は二十歳の女です。十六の時朝鮮人と結婚して私の母と三人で仲よく働いて幸福に暮らしていました。結婚後三年目に夫の弟が内地に働きに来て私方に身を寄せましたが、朝鮮へ送金するはずの彼は色々の女に夢中になって働いた金は全部使ってしまい少しも送金しないので苦しい中から私の方から送りました。ところがふとした事から義弟は病気になり働けないばかりか貯えもないので薬代から何から一切私共が面倒をみてやりました。この苦しい中で今度は夫が失業して仕送りも出来なくなった所、義弟は私達の間を割いて夫を朝鮮へ帰そうとするのです。朝鮮の親からは度々手紙が夫の所へ参りお前達ばかり楽に暮らしていてもこちらでは死ぬ様な苦しい生活をしているのだから帰って来て働いてくれというのです。で私は決心して一時夫を朝鮮へ帰しましたが、すぐ帰るつもりで出かけた夫は母が病気で到底帰れそうもないといってきました。夫の留守の一年三ヶ月の間私は一日として夫を忘れる事はできません。が彼も年老いた父母を置いて内地へは帰れないでしょう。私の母も段々働けなくなるので早く私に再婚せよと責めます。私はその気にはなれませんが私一人の働きでは暮らしてゆけそうもありません。どうぞ私のとるべき道をお教え下さい。
よく実情を調べて……
答:折角真実の実った美わしい内鮮人間の夫婦愛が結ばれたのに、義弟の⚫︎⚫︎⚫︎⚫︎るまでこちらへ帰れぬということ以外に、たとえ良人の真心に変わりがないとしても、色々故障が起こらないとも限りません。御二人の愛が如何に真実で熱烈でも今後事実において夫婦生活を遂げることが難しいようなら、考え直して生活方針を建て直す必要がありますから、よく明らさまな実情をお調べなることを御勧めします。
しかし、夫婦生活の根本は他から何人も立ち入ることの出来ぬ愛情にあるのでありますから、もしあなたの思慕の情がどうしても断ち切れぬというのであれば、たとえお母さんの命令だからとて再縁を強いられる訳のものではありません。
ただ、当てもしっかりつかぬのにこのさき果てしなく、いつまでも待たされ、生活にも困るという場合であれば、良人の諒解を得て離婚の上再縁をなさるのを、だれも無理とは思わぬであろうということを一言申し上げておきます。(前田多門)
⚫︎:不明文字
東京朝日新聞昭和六年九月二十四日朝刊

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